愛の森コラム
2015年07月31日(金)

地域福祉恐怖症

 朝の忙しなさにNHKの朝のニュースで、「高所平気症」の特集をやっていた。ジャムパンをほおばりつつ、その内容を吟味すれば、「都市部では高層マンションが立ち並び、 必然子育ても例えば地上50メートルで始まるということになる。育児が始まり、成長段階で、子供たちは高さという恐怖、危険が平気になるというのである。転落事故の原因のひとつとなっている」というのである。

 池袋にそびえる「サンシャイン60」の展望室がリニューアルされるというニュースがあったが、かれこれ40年ほど前、元巣鴨プリズン跡地が、サンシャイン60に生まれ変わり、 建設が進む時代に東池袋の安アパートで暮らしていた。完成して多少フィーバーが萎えた頃に、物見遊山で展望室から大東京の一望を眺めたことが懐かしい。いまや、天空に居を構える時代性である。 近い将来、一定のルールが整備され、落ちないドローンが初夏の東京の空を飛び回る時代が来るかも知れない。 「高所恐怖症」の人間たちには、スカイツリーや六本木ヒルズ等の展望室は恐怖を感じるだけの魔の空間であり、多分足を踏み入れることはないが、「高所平気症」は時代が生み出した新兵器症候群なのかも知れない。 そんな感慨に浸ってはいられない。定時の出勤時間に間に合う為、団地の駐車場から、マイカーを走らせる。気がかりは、グループホームのAさんである。

愛の森学園に到着し、担当者に状況を聞く。「汚物にさわってしまうため、不衛生である。他入居者の部屋から物品を持ち出してしまうため、クレームも出ている」との事。結論は即刻退ホーム以外に方策なし。 戻り先はおのずと愛の森学園となる。次に、本人に変わる候補者の選定ということになるのだが、あくまでも利用者本位の自己選択、自己決定が原理原則である。 トレード要員をチョイスするが、本人が拒否、また身元引受人が了解しなければ事は進まない。ひとりひとりの人生がドラスチックに変化するという大事な局面である。原因は「不潔行為」に我慢ならないためであるが・・・ 関係者でディスカッションするが名案は浮かばない、どうも皆不機嫌焦燥状態に落ちて行くような雰囲気に包まれる。診断名があるとすれば、「地域移行恐怖症」に罹患してしまったということになろうか?

 時代性は、障害者権利条約、その他の法整備で、誰もがひとりの人間として街の中で暮らして行く権利が保証される時代となった。しかし、事はそんな簡単な問題ではないのである。 障害特性の中には、「公共の福祉」に反する行動、行為を誘発する特性を有している方もいらっしゃるということである。 隣の家がゴミ屋敷だったら、どうなのか?・・・と不埒な比較はしてはいけないが、明らかに他者に対して迷惑な行動、隣近所への騒音等の迷惑行為に対しての規制はやらざるを得ないのも社会福祉従事者の役割であるということなのである。 地域福祉は決して甘いものではないとあつくあつく思いつつ、我が「地域福祉恐怖症」が癒えて、「地域福祉平気症」となった日には、熱く熱く未来志向の展開を目指したいと考える暑い暑いキラキラ太陽の真夏の日の思いである。

2015/07/31 18:03 | 施設長のコラム