愛の森コラム
2019年02月01日(金)

体験と経験と想像力

 梅の香りが気になる春待ちの季節、先日、ジャニーズの看板である嵐の活動休止が報じられた。この決断について、またこれに伴い行われた記者会見について、対応について、テレビやネット上では毎日様々な意見が飛び交っている。  

 愛の森の利用者さんの中にも、ジャニーズや嵐が好きな方は少なくない。活動休止を寂しがっての反応が見られるが、案外皆さん淡泊だった。報道を受けて感じたことは、テレビの世界が変わっていきそうだな…という事だった。  

 昨年には歌姫 安室奈美恵の引退、数年前には国民的アイドルであったSMAPの解散と、これまでテレビの世界をけん引してきた人たちが、次々に表舞台を去っている。嵐は休止まで2年の猶予があり、またSMAPの面々も個々での活動があるので完全に去った訳ではないが、テレビの世界の分布図が変わった事は確かだと感じている。  

 数年前はお笑い番組であふれていたテレビ欄が、近頃は海外での生活を紹介するような番組が増えたのも、時代の流れと共にテレビの世界に求められるものが変わったことが理由なのだろうか。  

 

 テレビに出る人を「芸能人」と呼ぶ。そのルーツを考えると、歌舞伎や落語等、芸術や遊芸、また役者等により多くの人たちが触れられるような媒介となったのがテレビであり、芸能人という呼び名がついたのだろうと考えている。(考えているだけなので事実は知りません。)つまるところの娯楽であり、利用者さんにとってはなかなか触れることの出来ない世界を、テレビを通して見聞きすることで世界を広げ、社会に触れるとても大切なツールであるのだと思う。  

 昨今は若者のテレビ離れがあると聞く。これ自体には然して興味はないが、インターネットの広がりが拍車をかけていることに間違いはない。ユーチューバー等、所謂「芸能人」でなくても有名になり、それを生業とする事が出来る世の中だ。  

 趣味嗜好が多様化し、インターネットの検索は一言入力すると何万もの結果がヒットする。大衆娯楽は時代から離れ始めているのか。一方で、始まりのきっかけは誰にも必要であり可能性は様々だが、テレビから受ける影響は多大だ。テレビから聞いた歌をうたい、テレビで見たご飯を期待し、テレビで見た景色を夢に見て、テレビに出ている芸能人に憧れる。  

 

 日々の愛の森学園での生活でも、利用者さん、職員と、テレビの話題で盛り上がることは少なくない。共通の話題として、思いの共有がしやすいのである。もちろんテレビ以外にも雑誌や買い物先など、日常生活上でたくさんのヒントを得ることは出来る。しかしそうした中で必要になるのは、想像力だ。想像力を豊かにするのは経験であり、想像と実際の差から生まれるのが現実であり、新たな想像だと感じている。  

 今後どのようなテレビ番組が制作されていくのか、そして我々はどういったものをその世界に求めていくのか。4Kや8Kのテレビも流通し、内容だけでなくその周辺機器にもバージョンアップが図られている。

 

 複雑になりすぎているこの時代には原点回帰をし、単純にきれいなものや楽しい世界、夢見ることの出来る世界を、きれいな画質のテレビでみたいなぁと思います。そうして利用者さんと一緒に眺め、行ってみたいね、食べたいね、と思いを共有し、出掛けていける世界を創っていけたら素敵だなぁ、と思います。

 

愛の森学園 職員O

2019/02/01 20:54 | 職員のコラム