愛の森コラム
2018年11月30日(金)

平成最後の師走に思うこと

先日、グループホームの日帰り旅行の引率で東京方面に出かけた。まずは、都内にある某一流ホテルでの豪華ランチバイキング。和洋中色とりどり綺麗に並べられた料理には、利用者のみならず引率した職員も心躍らせ、休日の贅沢なランチに舌鼓を打つ。バイキング料理の醍醐味は、好きなものを好きなだけ!?食事を楽しめることであり、現在流行の意思決定(支援)には最適なシチュエーションと考える。私の意思決定は、目の前で捌いて頂く特大の国産ローストビーフを贅沢にも2皿堪能することであった。

贅沢ランチの後はこの旅行のメインでもある東京スカイツリーへ。平成24年5月に開業した世界一高い自立式電波塔でありその高さは634メートルを誇る。当日は好天に恵まれ、開業から6年経過した現在でも大変な盛況振りであった。現地の誘導員の指示に従い高速エレベータに乗車すると、瞬く間に地上350メートルの展望デッキへ。そして、更にその100メートル高い地上450メートルの展望回廊からは、関東一円を見渡すことができる壮大なパノラマが広がっていた。幸いにも高所を苦手とする利用者がいなかった為、「富士山はどこ?」なんて会話が弾みながら思い思いの景色を楽しまれる。東京スカイツリーは平成時代の建造物の中でも、特にその高さと存在感が印象として強いが、その構造は伝統的な日本建築に見られる「そり」や「むくみ」をもち、五重塔の心柱制振システムなど、古来の技と日本の最新技術による制振構造となっているから驚きだ。展望回廊のあまりの高さと、壮大なるパノラマビューに高所恐怖症を忘れ、利用者との旅行引率であるにも関わらず、現実から少し逃避した感覚に陥るのであった。

愛の森学園は昭和63年5月に地上3階・地下1階の規模で開所を始めた。まさに平成と一緒に歩みを進めてきた施設である。入所利用者40人中、昭和63年当時から利用を続けている利用者は14人。重度の知的障害であればあるほど、時間やその経過の概念に理解が難しく、さらに30年の加齢や老いをどう受け止めているのかも定かではない。たかが30年、されど30年と思いつつ、平成と歩んだその30年の施設生活の重みを、我々職員はどう考え、受け止め、今後を見据えるか。その平成史の中で制度の流れは後半の15年間で大きく変動。長期に続いた措置時代は基礎構造改革を皮切りに自由契約へ。利用実績に基づく報酬改定に支援費制度・支援区分の導入。さらには地域福祉の推進。自己決定・自己選択から意思決定支援へ。制度は変われど入所施設の生活が劇的に変化(進化)を遂げたかといえば、制度改正に伴う職員処遇の改悪?や、質・量の不足もあり、様々な矛盾を感じるも、最低限の役割を果たしてきたことになるのか・・・。

平成は「天地・国内外ともに平和が達成される」と意味されるが、この30余年は天も地も内も外も大きな災害・事件等の出来事が多かったように思える。障害者福祉では制度上、入所利用者にとっては「内」から「外」へのスローガンが掲げられてきたが、リスク回避の優先や地域展開に意欲的になれない法人事情を理由に、議論を平らに成らされてきたように思える。

そんな平成もいよいよ幕を閉じる。今後の社会や障害者福祉がどのように歩んでいくのか不透明な部分が多いが、天地も内外も平和や幸福を追求することには変わりはない。今年は愛の森学園にとって様々な出来事があった年であったが、平成最後の師走は元号の意味のように全てが平和でありますよう、また、新元号が始まる新年を穏やかに迎えられるように・・・
 

愛の森学園 職員・E

2018/11/30 17:00 | 職員のコラム