愛の森コラム
2018年06月29日(金)

集団と個から考える今

 田に水が張られ、美しい水田が目を惹く季節。四季を感じる日本の中でも、とりわけ日本らしさを感じる季節となった。諸外国が刊行している「日本のガイドブック」には、この景色が載せられているのをよく見かける。

 

ただ今サッカーワールドカップの真っ最中。果たしてロシアの地でトロフィーを抱くのは、どの国なのか。

開催前の日本はいまいち盛り上がりに欠けていたが、始まればやはり見てしまうし、ニュースの上位にランキングしてくるのはこの話題。しかし、サッカー大国のひしめくヨーロッパや南米は、国としての気迫がやはり強い。

 

 では、この「国」の概念とは一体何なのだろうか。戦争と平和を繰り返し、土地に引かれた見えない線、或いは海に隔てられた境。土地土地に住む人間は、形は同じでも特徴には違いも多い。しかし、日本から一番遠い外国であるペルーの人にはどこか親近感の湧く面立ちも見て取れ、不思議だ。その国に生まれ、その国で育つ。どこであっても同じ事が起きているのに、取り巻く周辺の環境によって、見えるもの感じるもの考えること、沢山の事が違ってくるのだから、変化も著しい。

 もともと日本は「集団」の意識が高く、「個」は後回しにされてきた。それが徐々に「個」が押し出され、「集団」とのバランスに変化が出てきている。社会は多数が変えるというよりも、少数が挙げた意見に多数が賛同して変わると思っている。こうした事から、障害者福祉を取り巻く環境も、日本の中で少しずつ変化してきているのではないか。

とは言えまだまだ世間に十分には認識されず、所謂マイナーな世界。日々を生活する利用者さんたちは、毎日大小の変化の中で、それぞれの時間を過ごしている。4年に1度のワールドカップが開催されていても、中継は深夜。寝ている時間だ。観戦の是非は置いておくとして、「集団」や「個」の捉え方の変化は、愛の森学園の中でも変化のきっかけになっていると思う。

 

 個別支援計画の立案では、その人が何をやりたいのか、を、汲み取る力が必要。

汲み取った後は、集団の中では個別への対応にも限りがあるし、出来る事と出来ない事がある、この葛藤。それでも、やりたい、と意思を示してくれた事へはなんとか実現させたいと思う一種の職員のエゴで、職員も頑張ってみる。「個」が重視され始めてきたからこその支援かもしれないし、少数が認められる社会になってきたからかもしれない。障害者福祉の世界だって、時代の変化と共に、確実に変化している。

支援は地図上に引かれた線のように、実際には見えない、言葉のないやりとり。言葉の裏に秘められた、日本人特有の行間を忘れずにいたい。

 

愛の森学園 職員O

2018/06/29 22:18 | 職員のコラム