学生時代に先生に教わったことを思い出す。社会福祉の概論や施策は目まぐるしく変化する。10年ひと昔というが、社会福祉も10年で大きく変化するといった話だったと思う。私が知的障がい福祉の仕事に携わり26年が経過した。確かに利用者さんへの支援、福祉施策、事務仕事などなど、随分変わったな・・・と思う。
そして今の時代は意思決定支援が大きなテーマである。どんな重いハンディキャップを持っていても自己選択の力はあり、その力を引き出す支援をするということが意思決定支援ということだろうか。(随分と簡略してすみません)愛の森学園でも、研修会を開き、支援員にガイドブックを配布し、皆で勉強中である。
そもそも知的にハンディキャップを持って産まれた方は、特に意思決定をする機会自体が少なかっただろうと思う。意思の表出が少なければ、周りの人々が決定をしてしまっていただろうし、親や支援者はこの子(利用者さん)を守るべき存在と思うばかりに本人が決められるべきことも親や支援者が決めてきた過去が少なからずあっただろう。それが意思決定の機会を奪っていたといわれる訳である。
私の場合、三人兄弟の末っ子で比較的放任で育てられたこともあって、自らの決定に否定されることは少なかった。そういう子供の頃からの経験というのは大切で、失敗も成功も経験することは必ずその後の人生に役に立つものである。
それは知的にハンディキャップを持つ方も同じで、普段から自分で決めることをして来なければ、自分で決めることなんて出来ないし、自分で決めたことに失敗と成功の経験がなければ、現実的な意思決定をする力は養われないと考える。親や支援者が決めてくれる環境に身を置いていれば、おのずと自分で決めることすら出来なくなるし、考えることをしなくなるだろう。
支援者は、その人(利用者さん)の小さな思いをいかに汲み取り、小さなことをいかに実現に導くか。それこそが、その人(利用者さん)の意思決定の力を伸ばす方法なのだろうと考える。支援学校や障がい児支援においては意思決定を幼少期から伸ばす教育・支援が行われていると聞く。障がい者支援においては小さな意思決定の機会を大切に、意思決定を導く支援に力を入れていかねばと考える、
伝説の漫才コンビやすし・きよしの西川きよし師匠が「小さいことからコツコツと!」と言う。この言葉の意味合いは、意思決定支援には全く関係ありませんが、我々支援者は障がい福祉の専門家として「小さいことからコツコツと!」日々の関わりを大切にしていかねばならない・・・そう思うこの頃です。
愛の森学園 総務責任者 武藤祐生