年度末の思いとして、文芸春秋2月号の小池百合子知事と立花隆氏の特別対談から様々な教訓を学ぶことにする。意外だったのは、政権党に辛口の立花氏の高評価である、「私は、小池さんのような国際的に大きな視野を持った政治家こそ、日本のトップに立つべきではないかと思いますよ」と絶賛している。書かれている国際派の象徴が下記である。
小池氏は、「私は東京をこの3つのシティにしたい」と言う。「安全な街」「多様性のある街」「環境・金融先進都市」である。ここに小池氏ならではの国際派のカタカナ語が登場する。「セーフシティ」「ダイバーシティ」「スマートシティ」に変身するのである。
また立花氏の鋭い問いかけ(エジプト史の中での権謀術数)の中で、「非常に重要なご指摘ですね。清濁併せ呑む器量は、政治家に不可欠な要素だと思います。私は「鳥の目」「虫の目」「魚の目」という3つの目が必要だと考えているんです。「鳥の目」は、物事を俯瞰する視点。そして「虫の目」は、ミクロの細やかな視点です」。立花氏に「魚の目とは?」と問われて「トレンドを追う視点のことです。魚の群れは、寒流から暖流へと、エサとなるプランクトンが多い潮流へ動きます。私自身は群れるのが好きなタイプではないのですが、トレンドや人々の関心がどの方向へ流れていくのか観察することは重要だと考えているんです」と語っている。
知的障害者福祉にその教訓をいただけば、「鳥の目」は、世界と日本の政治、社会、経済情勢からの視点であり、「虫の目」は、日々の利用者の皆さんの喜怒哀楽を察知する視点であり、「魚の目」は、社会福祉法人改革、障害者権利条約、障害者差別解消法、障害者総合福祉法等を勘案した愛の森の経営、運営の視点ということになろうか?
多少気になったのは、先の「清濁併せ呑む器量」という部分であり、対談の流れの中で、「都知事という立場になって改めて思うのは、「政策」と「政局」、両方のカードを使いこなしてこそ、政治家だということです。・・・そんな中で、“清く正しく”だけでは潰れちゃうわと常々思っています」とホンネを吐露している。
知的障害者障害者福祉において「清濁併せ呑む」ことが良いか?悪いか?と問われれば、「悪い」と答えるのが常道と考える。しかし、例えばインフルエンザ蔓延のさなかの、施設運営には、時に自己選択、自己決定すべき利用者優先を掲げつつ、半ば押しつけの帰省要請、居室変更、通所の営業停止、ホームからの一時的施設利用等の利用者軽視の感染拡大防止対策の大鉈を振るわざるを得ない。しかも長期化は出来ない。出来高払いの制度体系の中では、収入減が著しく、法人経営を圧迫する。社会的使命は、時としてカオスの状態を呈するということである。
新年度は、小池氏の「鳥の目」「虫の目」「魚の目」をクロスオーバーさせつつ、想定される難題に対し、そのカイゼンに向けて取り組むしかない。「3つのシティ」ならぬ「3つの視点」を課題としよう。①利用者の重度化・高齢化の視点、②防災・防犯の視点、③人材育成の視点ということにしよう。「清濁合せ呑む」ことに時として踏み切らざるを得ないと覚悟しつつ、そこは慎重かつ節度を持って取り組みたいと誓う年度末の思いである。