2024.10.02
新紙幣発行に思う
古谷雅彦監事から、ご寄稿を賜りました。
昨年6月、監事ご就任。財務省ご出身で、ご退官後、いくつかの会社の顧問や、現役時代からライフワークである沖縄関係のお仕事など、ご多用ななか、愛の森の監事をお願いしています。「もちのき」にも、ほぼ毎号、感想をいただいています。
昨年6月、監事ご就任。財務省ご出身で、ご退官後、いくつかの会社の顧問や、現役時代からライフワークである沖縄関係のお仕事など、ご多用ななか、愛の森の監事をお願いしています。「もちのき」にも、ほぼ毎号、感想をいただいています。
新しい紙幣が発行され、手にすることが多くなった。これが新紙幣か。慣れていないので、この紙がお金として通用するのかどうか不思議な気もする。ためらって以前から使っている紙幣で支払う。だがいずれ渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎に馴染む。紙幣なんて日頃まともに見ていないが、それでも馴染む。
紙幣には高度な偽造防止技術が施されているが、普通の人が、このお札、何かおかしい、と気づくのは、紙幣の顔に違和感を抱くのが端緒だという。肖像画は社会の象徴の一つであるとともに偽造防止技術であり、日頃意識して見ていないにしても、この紙幣、変、と気づく。
そのように気づいていただくよう、紙幣を製造する国立印刷局は優れた描き手と高度な印刷技術で肖像画を描く。描き手には絵が上手いというだけでなれるものではなく、美術の専門教育を受けて職員になっても肖像画を担当できないままに終わる者もいると聞く。日頃見ていないのに、変と気づかせる一本、一本の線の肖像画。
しかし紙幣を手にする人々が本当に見ていなければ偽造に気づかない。見ていないようで見ているから気づく。我々の暮らしの中で、見ていないようで見ている、ということは実は少なくないように思われる。 [古谷 雅彦]